眠りのアリス





ぱたんっ


厚い本を閉じた音で我に返る。
柔らかいソファに座っている内にいつの間にかうとうとしていたらしい。
横に傾いていた体を更に傾ける。

「重い」

寝ている間に寄りかかっていた気持ちのいいクッションは、低く文句を言った。
ククールは寄りかかった体はそのままに、ずるずるとソファに深くのめりこむ。
膝が低いテーブルにこつんと当たった。

「寝てた」

「起きたならどけ」

「うん」

頷きながらククールは、猫のように額をマルチェロの腕にこすりつけた。
マルチェロは空いている左手で新しい本を手に取り、膝の上で開いた。

ぼんやりしている頭に雨の音が響いている。
外は雨だ。
ククールは少し視線をずらして、窓から外を見た。

風が雲を呼び雲が雨を呼び雷を呼ぶ。
雨は世界を灰色に染めて熱を奪う。
連鎖反応で流れていく自然は留まることはない。
世界はいつだって違う姿を見せてくれる。

眠りの世界もまたしかり。

眠い時は寝るに限る。
小さく欠伸をして、ククールは目を閉じた。
そしてすぐ側にある暖かい眠りの世界に、頭から沈んでいった。

 

 

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