絶対的共犯

 

 

「どうしてあんたはそうなのよ!!さぞかし楽しかったでしょうね私が傷ついて汚れていく様は!!? そうやっていつも私を追い詰めて、どん底まで突き落として。それを楽しんで見てるだけ・・・!! 腹が立ってしょうがないのよ!!」


私は堪らず立ち上がると、地団駄を踏み両拳を握り締めて叫んだ。

「なに喚いてんだよ、勘違いじゃねぇ?」

正面に座る景吾は、持て余し気味な長い足を優雅に組みなおした。

「勘違いね、そうだったらいいに決まってるけど! わかるのよ!あんたのことなんて、長いこと付き合ってたらわかるのよ!! わかるからこそこうやって怒ってるんでしょう!?」

もう自分でも何を言っているのかわからない。
ただ、怒りの炎が胸に渦巻いている。
心臓が痛いぐらいに脈打って息苦しいが、私の勢いは止まりそうにもない。

「それに、勘違い!?勘違いなんて、なんてことを!! あんたなめてんの私のこと?わかるに決まってるでしょう!! 嫌でもこれだけ傍に居れば!!」

怒っているはずなのに顔が笑おうとして、変に歪んでいるのがわかる。


「あんたは、わからないの・・・・!?」


自分の感情が抑えきれずに身体が震えるのを止められない。
思わず涙が零れた。
絶叫に近いこの叫びのいくつが、この男に届くのだろう。

「これだけそばにいて、私がどうして怒ってるかわからないほど馬鹿じゃないでしょう!!?」

「他人の考えることが分かるって、本気で思ってんのか、?」

「あんたはどうなのよ、そのお得意のインサイトとやらで見てみなさいよ! わかんないなら大した部長ですこと!!笑っちゃうわね!」

涙は溢れて溢れて止まりそうにもない。
キィーンと高い音調の耳鳴りが微かに聞こえてきた。

「私にはわかるわよ、いまあんたが何考えてるかなんて」

景吾は目を細めあごをしゃくって私を見た。
言ってみろ、という余裕の表情だ、相手を挑発している顔。
出会った頃には表情の一つ一つが新鮮で輝いていたが、今はすでに見慣れてしまった顔。
どの意図の下で何のために作られた表情なのかがわかる。
その顔に騙されることは、もうない。


「あんたは、どうしようもないくらいに私を愛してる」



「お前もな」


景吾は間髪入れずに返してきた。
うっ、と咽が詰まって苦しくなる。
涙腺が一気に緩むのを感じた。

そうだ、わかっていることだった、私がこの男を愛していることなんて。


「だから、どうして・・・、離れたいのに・・・・」

「離れたいなら離れろ、お前の意思で好きに行動すればいいじゃねぇか」

「・・・そうよ、あんたは、私の気持ちを全部わかった上でやってるのよね・・・」

「もう充分だろ?」

「私だって言いたくてこんなこと言ってるんじゃないわよ!! あんたがわかってくれるかもしれないと思ってしまうから、言ってしまうのよ!」

「俺を試すなよ、

「わかってるくせに・・・、わかってるくせに!!!」

景吾は退屈そうにため息を吐くと、椅子から立ち上がって私へと近づいてきた。
その美しい顔を見上げて、思わず声が洩れた。


「あんたにとって、私は必要な存在なの・・・?」


「もちろん」

景吾は苦笑するように平坦な笑い声を上げて、立ちすくんで
動けないでいる私を見透かすように、ゆっくりと抱きしめた。


「こんな状況でも俺を必要とするお前が、俺には必要なんだよ」

 

 

(03.12.8)→(04.6.23修整)

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