いい子にはごほうびを
「長太郎!ジュース買ってきて〜」
「はい!さん!」
「 さーん!」 集合していた部員達に監督が終わりの挨拶を済ますと、長太郎は急いで少女に向かって走った。 「長太郎」 目が合うと、
の顔は自然と笑顔になる。 「一緒に帰ろ。急いで着替えて来てね!」 「はい!すぐ着替えてきます!」 長太郎はにっこり笑って言うと、軽やかに部室へと走っていった。
「そうやなぁ、鳳もえらいわ。あそこまで尽くす男はそうおらんで」 2人の会話を少し離れたところで聞いていた忍足と向日は、付き合い始めて間もない2人をからかうような会話を繰り広げていた。 「どう見ても飼い主とその飼い犬だよな」 「女版跡部や」 「ほんとの女王様じゃん!ウケる〜!!」
「え、いやほら! がいつも鳳のことあごで使ってるから女王様みたいだな〜って!なっ侑士?」 「おぉ!そうやそうや。跡部もそう思うやろ?」 2人はわたわたしながら目の前で激しくオーラを放っている跡部に説明した。
跡部が軽く首を傾げたところで、向日が激しく首を振る。 跡部はいかにも人を馬鹿にしたような冷笑を作ると、やはり人を馬鹿にした口調で喋りだした。 「お前らの話をまとめると、 が飼い主で鳳が飼い犬ってことになるな」
長太郎は入れ違いで出てきた跡部に気づいて笑顔で挨拶をしたが、跡部はそれを無視するように音を立ててドアを閉めた。
「朝練があるんでしょ?」 「明日は自主練だから何時でも大丈夫です!」 長太郎は両手に鞄を持ちながらにこにこ笑って
の顔を覗き込んだ。 そして長太郎を見上げて、少し恥ずかしそうに微笑む。 「それじゃ、7時にウチの前で」 「わかりました!」
そして が逃げられないように、荷物を置いた両手で腰をしっかり掴むと、頬から唇へとついばむようにキスを浴びせかける。 「・・・ん」 すっかり
の体の力が抜けてしまった頃になって、長太郎はようやく唇を離した。 「ごちそうさまでした」 優しく笑いながら の耳に囁くと、 は顔を真っ赤にしながらも小さく頷いた。 その表情に、ほんとはもっとずっと抱きしめていたいんだけどな、なんて思いながら長太郎は鞄を拾い上げて の腕を取った。
「え?」 「いいつけ1個でキス1回でしょ?いま2回したじゃない」 「そうでしたっけ?」 長太郎はわざととぼけたような表情を作って頭をかいた。 「もうっ・・・」 は顔を赤くしたままで長太郎を睨みつけるが、逆に長太郎の笑みは深まるばかり。
はくるりと方向転換をすると、長太郎を置いてさっさと歩き出した。 長太郎は前にいる に2歩で追いついてしまうと、とどめとばかりに耳元に囁いた。
――1つ年上のこの人をからかうのが楽しくてしょうがないみたいだ
何か決心したことでもあるのか、きっと長太郎を睨みつける。 「いつでもどうぞ」 「え?」
「いっ・・・」 歯がぶつかった感覚に恥ずかしさがこみ上げてきた とは逆に、長太郎は何も考えられなくなってしまった。
そうとう赤い顔になってるだろう。
心配そうな声と同時に背中に暖かい手のひらを感じる。 「・・ さん」 「ん?」 「さっきのいいつけ守った時のごほうびはなんですか?」 「え!?えーっとね・・・」 顔を伏せたままでも慌てた
の顔を容易に想像できる。 はびっくりした顔で長太郎を見上げている。
「・・・長太郎」
「だから、ごほうびは さんがいいです」
は顔を真っ赤にして俯くと、そっと長太郎のシャツの端を握った。
長太郎は心の中でガッツポーズを作ると、そっと のつむじに口付けた。 「じゃあ、まずは って呼んでもいいですか?」 「うん」 はえへへ、と笑うと幸せそうな顔で長太郎に抱きついた。
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