プライド

 

 

景吾が立っている。
少し眉を寄せた不機嫌そうな表情で。

ポケットに両手を突っ込んで、壁に背を預けて。


駅前だから人通りは多い。
前を通る女の子達が跡部を見ながら、こそこそ楽しそうにはしゃいで通り過ぎる。

やはり、かっこいいのだ。

というかどう見てもかっこいい。

背はすらりと高いし、顔も整っている。
服も高そうなのを無理なく着こなしているし。
そこにいるだけで様になるというのはすごい。

私なんて、彼を見ているだけでなんだか感動してしまう。

何か伝わってくるものがある。


たぶんそれは、跡部のふるまいとか外ににじみでてきてる内面のもの。


それだけで人の目を奪うもの。

そんなことをつらつら考えていたら、なぜか切なくなってきた。


と、苛立たしげに髪をかきあげた景吾と目が合った。

彼は急に壁から背を離すと、こちらに向かって走ってきた。
途中でぶつかった女の子が嬉しげな悲鳴をあげても全く無視している。

てめぇ!人のこと散々待たせといてこんなとこで何してやがる!!」

「え、跡部景吾鑑賞?」

「あぁ!?」

「ごめんなさい」

私は素直に謝った。
すると景吾は怒った顔のまま、私の頭をぐしゃぐしゃに掻き回した。

「うわっ?なによ」

私はびっくりして頭の上の景吾の手を押さえた。

「オレの傍に居て情けねぇ顔すんな」

「・・・情けない顔してる?」

「あぁ、目も当てられねぇくらいにひどい顔してたぜ」

「じゃあどんな顔してればいいの?」

私が跡部の顔を見上げながら首を傾げて聞くと、景吾の手は私の頭からあごへと移動した。
首が痛いくらいに更に上を向かされる。

「もっと自信のある顔をしろ」

「・・・どんな顔よそれ」

「オレの女だってことに自信を持てっつってんだよ」

「景吾の女だって自信ねぇ・・・」

「そうだ」


景吾は言うが早いかいきなりキスをしてきた。

人がたくさんいるというのに、見せ付けるかのようなゆっくりとしたキス。

私はなんだか肩の力が抜けて、よりキスに集中するために景吾にぴったりと身体をくっつけた。


「・・それでいいんだよ」

「今の顔でってこと?」

「そうだ」

キスが終わると、景吾は満足そうににやりと笑って私の唇を拭った。

「じゃあ私が情けない顔したら、いつでもキスしてね」

私もにやりと笑って返す。

「あぁ。いつでもどこでもいいぜ」

「いや、流石に場所は選んでほしいかな・・・」

 

景吾がかっこいい理由がなんとなくわかった気がした。

それはプライド。

決して自尊心とは違う、凛とその人を支えるもの。

 

「景吾、ありがと」

私はにっこり笑って言った。心の底から気持ちが温かい。

「・・・っ」

いきなりキスをされた。
さっきとは違う、痺れるほどに唇を強く吸われる。


「わ、わたし情けない顔した?」

笑ってたはずなのに。
その顔が情けなかった、って言われたらどうしようもないけど。

「いや、ヤリたくなるような顔だった」

流石に自分の顔が赤くなるのがわかった。

景吾はまだにやにやしながら私を見ている。
でもふと思いついたように真面目な顔になると、私の耳に囁いた。


「その顔はオレ限定だぜ」


顔が熱い。
恥ずかしいからじゃなくて、嬉しくて。

私は、またさっきと同じように、にっこりと微笑んでみせた。

 

 

 

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