アナタとならドコヘでも
「ねぇこれはどう?」
私が手に取ったのは、ひらひらとしたフレアが可愛らしい水色のスカート。
腰に合わせて横にいるキヨを見ると、相変わらずにこにこ笑っている。
「うーん、可愛い!ちゃんはなんでも似合うね〜」
「・・・・ありがと」
なんて言いながら盛大に溜め息を吐いてしまった。
だって、キヨはさっきからずーっと
「可愛い!」
「似合う!」
としか言わない。
ちょっと大人っぽいパンツスタイルとか、レースのたくさんついたワンピースとか、
色々合わせてみても全部コメントが一緒。
最初は嬉しかったんだけど・・・。
本当にそう思ってるの?とか言いたくなるし、いい加減嫌になってきた。
「どしたの?疲れた?どっかで休もうか?」
ぴょこりと私を覗き込むキヨは、にっこり笑顔。
私はそのかっこいい笑顔につられて、溜め息を午前中からの買い物のせいにした。
適当にそこら辺の喫茶店に入って冷たいお茶を2つ買う。
やっぱり疲れてるのもあったみたいで、私は椅子に座れてほっとした。
自然と下がり気味だった機嫌も良くなってきた。
キヨのさっきからのどうでも良さそうな態度とかが消えて、これからの楽しい時間が楽しみになれる。
「次はどうしよっか?」
朝からずっと買い物につき合わされちゃいい加減コメントもめんどくさいよね、なんてことも思えてきた。
仕切りなおすつもりでにっこり笑ってキヨを見る。
キヨもにっこり笑い返してくれた。
「ちゃんの行きたいトコでいいよ」
びきしっ
あ、やばい。
なんて思う暇もなく私の口は喋りだしていた。
「キヨ、いっつもそれ!私がどこ行きたいって聞いてもいつも『私の行きたいトコ』って!
そりゃ嬉しいけどいっつもそれってあんまりじゃない?たまにはキヨの行きたいトコに行きたいと思ってる
私の気持ちを尊重してくれてもいいじゃない!」
「えっ、ちょっ、ちょっ・・・」
「それに今日だって買い物の最中どの服着てもずっとおんなじ事しか言ってくれないし!
どうでもいいならどうでもいいって言ってよ!無理につき合わしてるみたいですっごくイヤ!!」
急に興奮したのと酸素不足でゼーハー言ってる私の前で、キヨは困り顔。
やばい。
泣きそう。
いきなりこんなこと、しかも人前で言っちゃって。
最悪・・・!
どうしよう、いくらキヨでも、絶対怒ってる・・・・!!
私は自分のかっとなったら止まれない性格を死ぬほど恨んだ。
でも、あれが間違いなく私の本音だ。
いつも私に合わせてくれるキヨ、すごく優しいキヨ。
だけど、それがキヨの本音なの?私に合わせてばっかでキヨはいいの?
「じゃあ行こうか」
「えっ」
キヨはいきなり立ち上がると、荷物全部と私の腕を掴んでさっさと店を出た。
「キ、キヨ・・・」
さっきのこともあってか、なんだかキヨの空気が怖い気がする。
腕を掴まれて一方的に引っ張られるなんて、普段の私だったらこれだけで顔を真っ赤にして怒鳴り散らしてるのに、
そんな気力もわかない。
ただ私の前を行く広い背中に、揺れるオレンジの髪を追っかけることしかできなかった。
びくびくしながら早足で歩いていると、キヨの足がゆっくりになって、止まった。
やっと少し余裕ができて周りを見渡すと、いつのまにか人気がない静かなビル街についていた。
小さなビルの裏にいるみたい。
すっとキヨが腕を放した。
怖い。
きっと怒ってる。
振り向いたキヨにびくっとすると、キヨは困ったように笑っていた。
「そんなにびくびくしないでちゃん、怒ってないよ」
そう言って私の頭を撫でるキヨの手は本当に優しくて、私は少し涙が出た。
「ほ、ほんと?」
「うん、ホント。全然怒ってないよ〜」
「ごめん、ほんとにごめんね!いきなり怒鳴り散らして・・・」
ほっとしたのと申し訳なさとで、涙がどんどん出てくるのを感じた。
「ちゃんの癇癪持ちには慣れてるつもりだけど、今回は流石にびっくりしたなぁ」
「うっ、そこまで言わなくても・・・」
ずびっと鼻をすすって顔をあげると、キヨはにこにこしながら私を見ていた。
「なんでそんなに嬉しそうなの?」
今なんて私みたく怒鳴っても不思議じゃないシーンなのに。
キヨは朝からその顔を崩してない。
「だってさ、ちゃんといられるのが嬉しくって」
キヨはでれんとした表情をしたあと、すぐに気まずそうに頭を掻いた。
「オレこそごめん!誤解させたくないから言うけど、いい加減に言ってたわけじゃないんだよ。
ちゃんが可愛くって何を着てもホントに似合うから、それしか言えなかったんだ。ごめんね」
そ、それはそれで・・・・。
「よくそんな恥ずかしいことぺらっと言えるね・・」
う、嬉しい・・・。
騙されてる気もしなくはないけど、嬉しい。
こんな時、かっとなりもするけどころっと気分を変えられる自分が好きだ。
「だって本当の事だから」
キヨはへらっと笑って私の髪を梳いた。
「ちゃんはオレの行きたいトコに行きたいって、ずっと思っててくれたんだよね?」
「うん。いつもキヨに合わせてもらってて悪いなぁって」
キヨはまた眉尻を下げて私を見つめた。
「ごめんね」
そしてぎゅっと抱きしめてくれた。
「今度からは気になったことがあったらすぐに言ってくれて平気だから」
そのままちゅっと音を立てて私の頬にキスをする。
「うん、ありがとキヨ。大好き」
いつでも私に合わせてしゃがんでくれていたキヨ、優しいキヨ。
今度は私がキヨに合わせなくちゃ!!
急に闘志が沸いてきて、きっとキヨを見上げた。
「ねえ!それじゃ今からキヨの行きたいトコ行こう!!どこに行きたい!?」
浮き立つ私とは裏腹に、キヨはシーンとしてしまった。
顔に手を当てて、何か考えてるみたいなので、私はじっと見守ることにした。
「あのね」
「うん!」
キヨは手はそのままにちらりと私の方を見た。
心なしか、顔が赤いような・・・?
「実はもう着いてるんだよね、オレが行きたいトコ」
「えっ!!?ここなの!?だってビルしかないのに・・・・、!?」
私はびっくりして辺りを見回した。
そして更にびっくりした。
こっ、ここは・・・!!
ビル街じゃなくて、ラブホ街だーーーーーーー!!!
「じゃ、行こっかちゃん!いやーついにこの日が来たかと思うと、嬉しいけど緊張しちゃうなぁ」
キヨはアハハなんて笑いながら私の腰に手を回すと、颯爽と一つのホテルを目指して歩き出した。
「大丈夫、痛いことなんてないよ〜」
「いや聞いてないって!ってか昼間っから!?」
「電気消せば夜と変わらないから大丈夫!」
さっきまでの受容的なキヨはどこに行った!?
誰だこの異様にやる気のあるキヨは!!?
「ま、待ったぁ!!」
門の手前で私は自分の全体重をかけてキヨを止めようとした。
けどキヨは、全く重さなんて感じさせずに2歩進んでからやっと止まった。
「やっぱし、ヤダ・・・?」
しゅんとしたキヨの可愛らしさと言ったら!
でも騙されないからね!!
私がもちろん、と言おうとした瞬間。
「ここのホテル、ベッドが回るしカラオケついてるし、なんとお風呂にジャグジーもついてるんだけど、それでもヤダ?」
「全く問題なしデス」
「さっすがちゃん!それじゃ夢の国へレッツゴー!!」
キヨに肩を押されながら私は思った。
――夢の国にキヨとなら、最高だよね
思ったというより、無理矢理自分を慰めてみた・・・・。
「絶対に痛くしないでよ!!」
ちゃんと注意もしつつ。
2004・6.13
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土岐と相互リクの「へたれ攻め千石」 初千石夢ですが、ちゃんとへたれてますか?
千石はアメとムチの使い分けが結構上手いと思います、甘え上手!
頑張ってへたれ目指してみたよ土岐!どうか受け取って・・・!(つまり返品不可)
花田がリクした「鬼畜リョーマ攻め」は青学に収納してありますので、ぜひ読んでみてくださいv |