本気と書いて、マジと読む

 

 

そんなこんなでいつの間にやら残りもあと一周弱です。

現在の順位は、不二、海堂、桃、乾、河村、英二、リョ―マ、少し離れて大石、手塚となっています。

不二はこのままトップを維持できるのか?
後ろから海堂、桃が、迫ります。
そしてスキッパーズの命運やいかに・・!?

 

 

遂に全員がラストスパートに入った模様です。

特にスキッパーズの猛攻は激しく、表情には鬼気迫るものがありました。
大石の滅多に見られないその顔は新鮮味があり、彼を男前に見せていました。

そして手塚はと言うと、――もはや鬼と化していました。


「フシュ〜、む、む・・」

「海堂、『M』から始まる英単語しか、僕は認めないよ?」

いつの間にか不二がルールブックとなっていたようで、絶対的圧力を持って彼はそう言いました。
海堂の背に冷たい物が走ります。

「Minute!」

さしもの海堂も、ここに来て大きな遅れをとってしまいました。

「えっ英単語!?いっEから始まるのって・・・!?」

何故だかあまりスキップに違和感のない河村も、少しずつ後ろへ流されています。
そこへ手塚よりも早く追いついた大石が、素早く河村にラケットを握らせました。

「Exciting!!グーッレイトォーー!!」

もう答えたにも関わらずスキップを続ける河村の速度はしかし、以前走っていた速度よりも格段と速いものでした。

それを見ていた不二が


――余計な事を、大石め・・くわっ(開眼)


と、なったかは分かりませんが、彼の美しい顔には焦りが生まれたようでした。

 

 

――ところ変わって

こんなに声を出しながら走っているのに、速度が落ちるどころか更に増していく青学レギュラー達を見て、脱落していた部員達は心の底から震え上がっていました。

今ではお笑いから最も遠い所に居た筈の三人が、大層真剣な顔でスキップしているというのに、その速度のあまり笑う事も出来ずにただただ見惚れるばかりです。
(その前に、笑ったりしたらこの世から確実に抹消される、と彼らは感じていました)


――7.77


好奇心から五十mの速さを計った部員は、思わずエクトプラズムを放出しました。

 

 

もうゴールは目前です。初歩的な単語が続きます。

「Globe!」

「Eal!」

「Land!」

やっとスキップから解放された手塚はその解放感から昇天しそうになりましたが、

「まぁだ早いんべ〜」

と、向こう岸に居たゴロウさんに励まされ、

「カイー!カイー!!」

と叫びながら一目散に不二目掛けて走り出しました。
(「北の国から2002―遺言―」参照)



乾の眼鏡がギラリと光ります。
逆光もばっちりです。

「Decalcomania!」

「ええっ!?デ、デカル・・?もっかい言ってにゃ〜!!」

そうこう言っている間にゴールまであと五m。
誰もが持てる限りの力を振り絞って走りました。

 

結果は不二、乾、英二、河村(バーニング力)、大石(火事場のアホ力)、リョーマ(大石に気迫負け)、海堂、桃、そして手塚(スキップ時代が長すぎた為)でした。


「という事は、不二先輩が手塚部長を好きに出来る・・・?」

今まで見守っていた部員一同は、ごくりと生唾を飲み込みました。

手塚はうつむけに倒れ、激しく胸を上下させています。
その為表情を伺えませんでしたが、リョーマの一言にがばりと起き上がりました。


「つーか英二先輩ルール違反っすよね?」


そう、リョーマが不二に問い掛けたのです。

「流石越前。良い眼してるね」

不二はにこにこ顔です。

「え〜!?なんで!どこが〜!?」

英二は手塚のどじょうすくいを想像している最中にそんな事を言われたので大層驚きました。

「最後、まだ答えてないのに走ってゴールしただろう、あれだな」

乾は相も変わらず逆光を背負いながら、冷静に分析します。

 

その後ろで、手塚の顔は見る間に明るくなっていきました。
例えて言うならばミッ○ィーから、満面の笑みで

「ピィカァ〜v」

と鳴くピ○チュウへと変化した感じです。

少女から女への、メタモルフォーゼ。
少年よ、大志を抱け。
白い光に包まれ輝かしい表情をした手塚が、そこに凛と立っていました。

 


「そういうわけで英二は反則負け!罰ゲームだよ。フフッ」

不二はそう言うと、がっしりと英二を捕まえてどこかへと消えてしまいました。

「あ、誰も付いて来ないでね。特に乾」

その前に釘を刺す事も忘れませんでした。

既にビデオを片手に、ノートを小脇に、そして頭に鉢巻きを巻いて木の枝を差していた乾は、開眼している不二を見て泣く泣く諦めました。

 

 

「にゃ、にゃあ不二〜、痛いのとかはナシな?」

「大丈夫。全然痛くないよ」

英二は不二の笑顔に不穏なものを感じて、びくびくしていました。

不二はくすりと笑うと、英二のジャージのジッパーを胸の辺りまで一気に下ろしました。
一瞬にして、英二の鍛えられた美しい胸があらわになります。

更に襟を広げて整えている不二を見て、英二は益々不安になりました。


――かっ、開眼してる・・・!?


勿論気のせいではありません。

「さてっと仕上げは・・」

不二はにこりと極上の笑みを浮かべると、英二の襟をぐいと掴み、鎖骨の辺りに噛み付きました。

「いっ・・!?」

英二は噛み付かれた事にびっくりしたのと、


――痛くないって言ったじゃん!


と抗議の意味も込めて、不二の背中を強く掴みます。

程なくして、ぴちゃり、という音と共に不二が顔を上げました。
満足そうに頷くと、英二の肩を軽く叩きました。

「はい終わり」

英二は不二の目を見た途端、身体が熱くなっていくのを感じました。


――まるで身体中が火事だ、これじゃ。


自分の顔が真っ赤になっている様を想像して余計恥ずかしくなります。

「部活が終わるまでその格好で居ること!ジッパーあげたりしたら――怒るよ?」

最後は開眼モードです。
英二は何も言えずにこくりと頷きました。

「いい子だね、英二。じゃあ、戻ろう」

 

不二と手を繋いで戻ってきた英二の、憔悴した表情と胸元の赤い印から、部員ほぼ全員が瞬時に何があったかを悟りました。


「こういうわけだから、みんなよろしくね」


不二はそう言うと、とても幸せそうに笑いましたとさ。

 

 

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