癒す

 

 

目の前のコートでは、桃城・菊丸ペア対忍足・向日ペアの試合が行なわれている。


――押され気味だな


相手のペースに飲まれている。
あの二人相性は悪くないのだが、何せ急造コンビの為お互いの動きが読めていない。

しかしどんな状況であろうと、手塚は青学の誰かが負ける姿を想像することはできなかった。
こいつらなら、たとえどんな悪条件の中であろうとその全てをなぎ倒して勝つに違いない。

そう、思っている。


――しかし今回ばかりは・・


分が悪い。

手塚の眉間のしわが、より一層深められた。

 

――何だ・・・?

コートの中の二人の目つきが変わった。

それだけではない。
桃城の動きが、目に見えて良くなった。

そして、同点に追いついたそのショットが決まった時、理由は自ずと解明した。


――ああ、お前か


桃城、そして菊丸の視線の先に居たのは

「・・大石」

大石は、コートの二人に向かって握りこぶしを作ってみせると、こちらへおりてきた。

「あっ、手塚!」

病院から全速力で走ってきたのだろう、呼吸が荒い。
頭には、桃城の作ったはちまきをしていた。

「手は、大丈夫か?」

「ああ、心配かけてすまない。でも全然たいしたことないよ!」

大石はにこやかに笑った。

 

手塚は、青学ベンチの空気が瞬く間に変わっていくのを感じた。
隣に大石がいるというだけで、辺りの空気が暖かくなる。

絶対的な信頼感。

この男がいると、何もかもが大丈夫な様な気がするから不思議だ。

手塚のひそめられていた眉は、無意識の内にその力をほどかれていた。


「さぁ、勝つぞ!!」

 

 

back 02/9/7