癒す
目の前のコートでは、桃城・菊丸ペア対忍足・向日ペアの試合が行なわれている。
しかしどんな状況であろうと、手塚は青学の誰かが負ける姿を想像することはできなかった。 そう、思っている。
分が悪い。 手塚の眉間のしわが、より一層深められた。
――何だ・・・? コートの中の二人の目つきが変わった。 それだけではない。 そして、同点に追いついたそのショットが決まった時、理由は自ずと解明した。
「・・大石」 大石は、コートの二人に向かって握りこぶしを作ってみせると、こちらへおりてきた。 「あっ、手塚!」 病院から全速力で走ってきたのだろう、呼吸が荒い。 「手は、大丈夫か?」 「ああ、心配かけてすまない。でも全然たいしたことないよ!」 大石はにこやかに笑った。
手塚は、青学ベンチの空気が瞬く間に変わっていくのを感じた。 絶対的な信頼感。 この男がいると、何もかもが大丈夫な様な気がするから不思議だ。 手塚のひそめられていた眉は、無意識の内にその力をほどかれていた。
back 02/9/7 |