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世の中って意外とムズカシイ。 AがBを好きで。 でもBがAを好きな確立ってどれ位?
思惑
「越前」
呼ばれて振り向くと、そこには不二センパイ。 いつもの通り、読めない笑顔。 何、考えているんだか。
「何スか?」 「うん、別に大した事じゃないんだけど」 「じゃあ別に聞かなくてもいいっス」 「拗ねないでよ」
別に拗ねてなんてない。 寧ろこの人と話して得した事が無いから、出来たら避けたいだけだ。
「乾が手塚を連れて化学室へ行ったよ」
問題発言。 乾センパイが部長を?
そんなの危険に決まってるじゃないか!
あの人は部長を狙ってるんだから。
「……不二センパイ」 「え? ああ、越前、頭が腹痛かい? それは大変だ。すぐ保健室へ行ってくると良いよ」
そうだなぁ、帰り道に午後茶を買ってきて欲しいかな
そう付け加える不二センパイを見つめて。 僕に惚れちゃ駄目だよ、なんて言われて。
本当にこの人は読めない。
「……レモン?」 「ロイヤルミルク」 「……っス」
帽子を深く被って、顔を見られないように、化学室へと駆け出すオレの背中に、今回は特別だよ、と不気味に微笑む不二センパイの視線が刺さった。
「……まぁ、手塚。そう嫌がらずに」 「…話が違うじゃないか」 「お前のことずっと狙ってたんだ。こんなチャンス逃す訳ないだろう?」 「待てっ…乾!」
「部長、無事っスか!?」
駆け込んだオレの目に入って来たものは。
「乾センパイ、何やってるんスか」 「やぁ、越前。早かったね。後、少しだったんだがな」
読み違えたようだね、とメガネをずり上げる乾センパイ。 その乾センパイに追い詰められたように立ち尽くしている部長。
「残念だ。折角この乾ワンダースペクタクル以下略デラックス乾汁を飲ませようと思ったのに。そうだ、越前。邪魔したんだから代わりに飲め」 「嫌っス」 「そうだ、越前。飲む必要は無い」
炭酸系でも入っているのだろうか、シュワシュワ泡が上る液体をジョッキに入れて、乾センパイが差し出した。 「残念だな。英二が桃にでも飲ませるか」
不二は詰まらないからな、と何やらデータに書き込みながら出て行くセンパイの後ろから光が当たって、その長身は単なるシルエットにしかならなかった。
「どうしてここが判った?」 「不二センパイが教えてくれた。部長はどうして、そう騙されるかな。これじゃどっちが年上なんだか判らないよ」 「……越前の新しいデータが手に入ったと言われてな」
オレは頬の血の流れが忙しくなるのを感じた。 絶対、この顔は見せられない。
「越前?」 「……何も乾センパイに聞かなくたって、オレに聞けば良いだろ」
俯いたまま呟くと、部長はオレの頭に手を置いた。
その大きくて意外に温かい手が、オレは決して嫌いじゃない。
「今度からそうする」
苦笑する気配に思わず顔を上げると、普段は決して見せない笑顔。
「顔があ……」 「それ以上言ったら、乾センパイからさっきの汁貰ってくるから」
押し黙る部長にこっそり笑って、取り敢えず、午後茶を部長に買わせようと算段する。
アンタが騙されそうになったんだから教訓も兼ねて少しだけイタイメ見て貰わなきゃ。
アンタのそういう純粋な所、好きだけどね。
オレを抱き締めて放さないアンタにどうすれば伝わる?
「本当は俺が守る筈なのにな」 「オレが守られるようなヤツに見えてる訳? だとしたらアンタの目、ヤバイよ」 「酷い言い草だな。男の矜持ってものがある。判らなかったら辞書を引け」
オレを放さずにそう言う部長の唇がつむじに降ってきて、あんまり伝えようとしなくても伝わっているかもしれないと思った。
世の中ってムズカシイ。 AはBが好きで。 でもBがAを好きかは判らない。
でも、
ウチのBはちゃんとAを愛してる(と思う。)
Fin
土岐時雨様のサイトにて8888ヒットを踏ませていただきますたvv 王子に助け出されるプリンセス手塚、そして姫に迫る魔王乾。 2004/4/24
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