絹_さらりと艶やかな
なんだかよくわからないが。
1分程前までここには樺地という心強い味方が居たのだが、跡部はそれを帰してからずっとドアベルとにらめっこをしていた。 「くそっ・・・!」 跡部はイラついたように髪をかきあげるとその勢いを削がずに素早くベルを押した。
どたばたと人が動く音がした後、最高に不機嫌な愛しい声と共にドアが開けられた。
リョーマは机の椅子に座って、相変わらず不機嫌そうな顔で膝に乗っている猫を撫でている。 寝ていた、という言葉は本当のようで、通されたリョーマの部屋のベッドは乱れていてかつまだ暖かかった。 跡部はこの幸運に感謝すると共に恨みつつ、集中する熱を脳みそへと持っていった。 「やる」 跡部はリョーマの部屋いっぱいに運びこまれた色とりどりの箱を大雑把に示して言った。 「・・・いらない」 「やる」 「いらない」 「やるよ」 「いらないってば」 「貰えるもんはなんでも貰っとけ」 「い・ら・な・い」 一つ一つ区切って発音したリョーマに、跡部はぐっと堪えてため息を吐いた。 「もう会わないとか言うのは止めろ」 「会いたくないって言ったんだけど?」 「知るか、俺が会いたいから会いに来たんだ」 「あっそ。それでこの箱の山はなんのつもり?」 リョーマが素早く切り返すと、跡部は答えに詰まったようだった。 真剣に物事を考えたりする時の癖で、片手で顔を覆うように額に人差し指をついた跡部を見て、リョーマは呆れた表情でため息を吐いた。 「・・・もういいよ」 「何がもういいんだ?」 跡部はむっとしたように顔を上げたが、目の前のリョーマが微笑んでいるのを見て、ゆっくりとまばたいてから薄く口を開いた。
自分で自分の言った言葉に驚いている跡部を尻目に、リョーマは床に座りなおして美しく包装されているプレゼントの一つに手をかけた。 艶かしく光を放つリボンの、意外なほどさらりと柔らかく快い感触に、リョーマは更に深く微笑んだ。
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