Legend_誇張3割真実3割嘘4割

 

 

「あいつ、前に4股かけとったらしいで」


忍足はジュースの空き缶を手に、木に寄りかかっていたリョーマにいきなり話しかけた。
リョーマは背後から掛けられた声にちらりとふり返り、また前に視線を戻した。

忍足はそんなリョーマの反応をまったく気にせずに、額の汗を拭いながらリョーマの横で立ち止まる。

「しかもな、その女の子達はそれを知っても別れなかったんやと。なんでかわかるか越前?」

リョーマと同じところに視線をやると、軽い打ち合いをしている跡部がいた。
すでに部活も終わりの時間、氷帝のレギュラーは三者三様にダウンを行っているようだ。

「・・・さぁ?」

やっと返ってきた反応に、忍足はくすりと笑った。

「好きやから。4股されても跡部のことが好きやから別れへんのやと」

リョーマの顔を伺う。
限られた機会では常に帽子のつばを深く被って伺えない表情が、制服になるとよく見えた。


涼しい表情で跡部を見つめている。


「・・なんやもっと反応してくれへんと、お兄さん寂しいんやけど」

「興味ない」

この一年生はまったくのポーカーフェイスでしらじらと嘘を吐く。

「嘘吐け」

「そっちこそ、ウソツキなんじゃない?」

軽く溜め息を吐きながら言った台詞に、リョーマからやっとまともな反応が返ってきた。

「どこがやねん、俺ほど誠実な人間も中々居らんっちゅうに」

「さっきの話、誰から聞いたの?」


しまった。


忍足は頭の中で舌打つ。

「・・・そういう噂や」

声にも自然と諦めが漂いはじめる。

「噂、ねぇ」

リョーマはすっと目線を忍足に移した。


「更に言うなら噂というより伝説やな。10股とかのもあるけど聞く?」

ははっと乾いた笑いを浮かべながら、忍足はリョーマの視線を受け止める。

「興味ないね、噂なんて」

リョーマはじっと忍足を目を覗き込んだ。
そして。


「あんた一応あいつの友達なんでしょ。なのに、噂でしか知らないんだ?」


忍足の目に力がこもる。
眉間によるしわを止めることは出来なかった。

しばしの睨みあい。


先に溜め息を吐いたのは忍足だった。

「なんや、降参するわ」

「意外にあっさりしたね」

「かないそうもないからや。これからも跡部をよろしくな」

忍足が苦笑しながら言ったその台詞に、リョーマは少しだけ笑うと顔をコートに戻した。


「ウソツキ」


その台詞に忍足は大きく笑った。

「あっはっはっ・・!嘘やあらへんよ」

リョーマは軽く眉間にしわを寄せる。
唇も不満そうに寄せられて、顔全体で嫌そうな雰囲気を漂わせた。


「そっちのが掻っ攫う時楽しそうやろ」


二人の視線の先では跡部がコートを出てこちらに向かってきているところだった。

「ふーん」

リョーマは跡部を見ながら鼻で笑った。
その仕草にどことなく跡部を喚起させられて、忍足の舌に苦い味が広がる。


「悪いけど、自分の物を取られる程間抜けじゃないんで」

リョーマは言うが早いかさっと駆け出すと、思い切り跡部に抱きついた。
跡部はいきなりのことに普段見せることのない驚いた表情を。

 

「これでまた一つ伝説が増えるわけや」

忍足は苦い表情で笑った。

 

 

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