目・鼻・口_貴方のすぐ傍で

 

 

傍にいるようになって気づいたことは、こいつが結構可愛い顔をしている、ということだった。
今まで顔は顔としてしか受け取れなかったが、顔のパーツを一つずつ見るようになって改めて気が付いた。

その気性通りにつりあがりきみの目は、何か挑みかけるように常に前を向いている。
その目に映るために俺はここにいる、と思うほどに。

鼻は顔の中心に大人しく収まっている。
ちょこんと上向きな鼻頭は、軽くつついてみたくなる愛らしさ。

そして口、唇は、ふくりと柔らかそうにそこにある。
いつでも必要なことのみを、言葉少なにしか喋らないため出番の少ない唇は、逆に動かないことでそのままの存在を主張している。



甘い香りに痺れるような刺激で俺を誘惑して、今もそこにある。



「・・・あのさ、跡部さん」

「あぁ?」

くるりと回転した目が俺を困惑ぎみに捕らえた。


「近いんだけど、距離」


「そんなことねぇだろ」

リョーマには広すぎて、跡部がくつろぐにはぴったりの大きさのソファ。

そこに、跡部の膝に乗るようにしてリョーマは座っていた。

文句を言おうにも言えずに、かなり長い時間我慢大会のようになっていたが、跡部はあえて無視して自分の太ももにかかるリョーマの体重を楽しんでいた。

「いや近いって・・・、っ!」

腰に手を回されているせいで逃げられないリョーマは、観念して本格的に文句を言うことにしたようだ。
上半身だけを後ろでにやにやしている跡部景吾の方へと向けたが、そのまま思いっきり抱きしめられてしまった。

抵抗をする前にすでにそのスペースもないほど近くに抱きしめられて。
リョーマはゆっくりと体の力を抜いて、ため息を一つだけ落とした。

そんなリョーマをあやすように、跡部の手がリョーマの髪を優しく弄んでいる。

「なぁ」

「・・・なに」


「どうしてお前の目はそんなにでかいんだ?」


「は?」

跡部の胸に顔を埋めたまま、リョーマは少しだけ考えて、しかしすぐに答えを返した。

「あんたの顔がよく見えるようにだよ」

跡部が声を出さずに笑ったのがわかる。

「ほぉ。じゃあどうしてお前の鼻はどんな匂いでも嗅ぎ分けられるんだ?」

「あんたの匂いを間違えないようにね」

「それは知らなかったな」

跡部はくつくつと笑いながらリョーマの顎をついと上に向かした。
いたずらっ子のようにきらきら輝いた目が跡部を見つめている。

「じゃあ、どうしてお前の唇は、そんなに俺を惹きつけるんだ?」

「それはもちろん、あんたの唇が欲しいからさ」

「上出来だな」

跡部は満足そうに微笑むと、くすくすと笑いの収まらないリョーマの目に、鼻に、そして最後は唇に流れるようなキスをした。

「赤ずきんチャンにしては積極的すぎだね」

「なら役交代だな。俺が狼になってやるよ」

すでに自分のわき腹の辺りをゆるく愛撫している跡部に、リョーマはにやりと笑いかけた。


「2人とも狼でいいんじゃない?」

 

03/11/10

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