濛雨_じっとりと湿った大気
「止まれ!おい、止まれっつてんだろ越前リョーマ!」 リョーマは走るようにしてすいすいと住宅街の細い道を歩いている。
跡部は女と一緒に街を歩いていた。 そうしてたまたま会ってしまったリョーマ。 跡部はなんとなく自分の頬が引きつるのを感じながらも、それを無理矢理隠していつもどおりの挨拶を。 「よぉ、青学一年」 「ドーモ、氷帝部長」 リョーマは大きな目を見開いて更に大きくし、すっと跡部の横にいる女に視線を移してからぼそりと挨拶を返した。 「あーん?跡部景吾だ跡部景吾。いい加減名前くらい覚えてんだろ」 「・・さぁ?あんたの名前なんかどうでもいいし」 「・・・なんだと」
「それはどういう意味だ?」 見る見るうちに空気が張り詰めていくのを二人は感じた。 「おいお前、もう帰れ」 跡部はリョーマから目を逸らさずに女に言った。 事実、リョーマは素早く駆け出していた。 「・・っ!待ちやがれ!!」
狭い路地を曲がったところで、逃げられないと悟ったのかリョーマは立ち止まっていた。 眩しい夕日は家屋に遮られ、光に慣らされた目にそこは真っ暗闇のように映った。 じっとりと濡れた背中を意識しながら跡部が口を開こうとした時、リョーマが遮るように声を発した。
跡部はというと、あっけにとられたまま動けずにいた。
「・・・・あ?」 跡部がやっとリョーマの心に追いつきに短く声を発した頃、本体はすぐ傍で息を殺して雨が止むのを待っていた。
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