ポジティブ?

 

 

掃除のなかったリョーマが早々と部室のドアを開けると、そこにはすでに大石がいた。

「ちーっす」

「やぁ越前、めずらしく早いな」

挨拶をするといつもの笑顔で返される。
リョーマは自分のロッカーを開けて荷物を放り込んだ。
机に座って何か書きはじめた大石を無視して黙々と着替える。

「そうだ、今日は持久力を高めるためのマラソンをするから、アップで走るなら軽めにしておいた方がいいぞ」

「マラソンすか・・・」

急に思いついたのか、大石は突然話を切り出した。
リョーマはすぽんとシャツから顔を出しうんざり呟いた。

「きっとまた乾先輩があの気持ち悪い汁持ってくる・・・・」

リョーマの本当にげんなりした様子に大石は笑って言った。

「まぁでも、乾の汁のおかげでみんなにまとまりが出たと思わないか?」


「はぁ!?どこがですか?」


大石は一瞬リョーマの剣幕に押されたが、また笑顔に戻って話を続けた。

「お前は今年から入って来たから知らないだろうが、俺達の学年は個性的な奴が多いだろ」

「・・確かに」

「個性的な上みんなマイペースでなぁ。不二ですらこっちから話しかければ話したけど、そんなに積極的に話の輪に入ってこなかったし。手塚は見たまんまで周りから恐れられてたし。あ、仲が悪いなんてことはもちろんなかったけどな!」

昔を懐かしむように大石が喋るのをリョーマはじっと見つめた。

「でも桃と海堂が入ってきて、更に越前、お前が入ってきてからかな。あっという間に部の雰囲気が変わったんだよ」

自分を見つめるリョーマににっこり笑いかけて、大石はノートを閉じた。

「乾がああやってみんなの為に何かしようとしているのは、とても素晴らしいことじゃないか?」

「確かに、・・言われてみればそうかもしんないっすけど」

リョーマはにこにこ微笑む大石を遠慮がちに見上げた。

「ただ単にオレをまるめこもうとしてるでしょ、大石先輩」


だってアレはどう見ても乾先輩の趣味だもん。

という言葉は飲み込んだ。


「そんなことはないよ。ただ可愛い後輩のためとは言え、ちょっとやりすぎてるかもしれないけど」

苦笑する大石の笑顔につられてリョーマも思わず笑った。

「まったく先輩もお人好しというか、他人に対してはポジティブですね」

「え?」

リョーマはそれには応えず、出口まで進んでドアを開けた。

「オレが先輩の胃薬、減らしてあげますよ」

そして去り際に振り返り、にっと笑って部室を出て行った。

 

 

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