線縷_糸筋
ひらひらと舞うリボンをもこもこした猫が追いかけまわっている。 「バカかこの猫」 「この猫じゃなくてカルピン」 リョーマはじろりと跡部を睨み上げてから、頭をふるふると振っているカルピンをひょいと抱き上げた。 猫に変わりはないだろ、という言葉は飲み込んだ。
言わせなければならない言葉の為に。
「あんたこそ一体どうしたいのさ」 腹の探り合い、にはならなかった。 「・・あぁ、俺はな、我慢するのが嫌いなんだ」 「それで?」 「越前リョーマ、」 跡部はいつも低い声を更に低くした。
「いいか?お前はもうとっくに俺のもんなんだよ、気づけ」 「・・オレだけ一方的にあんたのものってズルくない?」 リョーマはむすっとした顔で呟くように言った。
「じゃあお前は、俺にお前のものになれって言うんだな?」 「それが普通じゃないの」 「ハッ!普通とは恐れ入ったぜ。お前ほど普通って言葉が似合わない奴もいないな、いつからそんなに主体性のない男になったんだ?」 リョーマは一瞬ぎょっとした表情を作ったが、すぐに顔から表情を消した。 「何が言いたいわけ?」 「何が言いたいと思う?」 これみよがしな挑発は続く。 「お前は何が言いたい」
「・・・だから何が?」 リョーマの声に苛立ちが増す。 逃がしてなるものか。
リョーマはついに観念したように、ため息を吐きながらふいっと横を向いた。 「・・・・ぁ」 視線を跡部に戻したリョーマは、金縛りにあったように口を半開きにして固まった。 跡部は力を緩めずにリョーマを見つめ続けた。
「聞いてんの?」 「あ?あぁ・・やっと言いやがったなてめぇ」 自分から言わせておきながら、その言葉の衝撃の大きさを予測していなかった。 認めて、言わせてしまえばこちらのもの。 甘く、細く、力強い、目に見えないもので出来ている糸。
リョーマは不敵な笑みを浮かべると、お礼と言わんばかりに思考回路ばかりが空回っている跡部の首筋に噛み付いた。
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