自然発生的微笑
急に日の光が遮られた。
「・・・なんすか、乾先輩」 「今日フォロースルーが少し鈍かったけど、どうかしたのか?」 越前は少し目を見開くと、帽子のつばを下げて、ふいと横を向いてしまった。 「なんでもないっすよ」 明らかに声が硬くなった。 さてどうしようか。
横上目でじろりと睨み上げられた。
「別に・・怒ってないですけど」 今度はむっとした表情をして下を向いてしまった。 つまり、越前からも俺の表情を見ることはできない。
「・・怒って、ないんだ・・・?」
俺は前かがみになって越前の耳に囁いた。 越前はびくりと体を震わせると、素早く顔を上げた。
俺の顔は、もちろん越前の顔の目の前にあったため、帽子のつばが眼鏡に直撃し落下した。 「げっ!割れた・・・!?」 越前は素早く眼鏡を拾い、手の中でくるくる回して無事を確認すると、ようやく俺を見上げた。
――全く計算通りだ
俺は顔を覆っていた手を下ろすと、素早く越前にキスをした。 そしてあっけにとられている越前の手から眼鏡を受け取り、わざとゆっくりとした動作で眼鏡をかけた。 「良かった、怒ってなくて」 越前と目を合わせ、自分では滅多にしない笑顔を作って言う。
俺の口元は越前の後姿が小さくなるにつれて、逆に大きく弧を描いていった。
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