Wash your hands!

 

 

お気に入りの赤いTシャツに黒いスボン。
いい気持ちでぶらぶらと散歩をしていたリョーマは、先程から少し足を速めていた。

下腹部がむずついているのである。


――どうするかな


家までは持ちそうにない。
リョーマは近くの公園に公衆トイレがあるのを思い出すと、そこに向かって走りだした。

 

 

公園入り口の柵を飛び越え、トイレの男マークを素早く確認してから飛び込む。
二つある便器の一つに先客がいたが、視界には空いている方しか映らない。

リョーマは手早くジッパーを下ろすと、一種の快感と共に目的を果たした。


――あー、すっきりした


隣からも水を流す音がしたので、なんとなくそちらに目を向けた。
次の瞬間、リョーマは音がしそうな勢いでそちらに向き直った。

「た、橘・・・!?」


「よぉ越前、久しぶりだな!」


爽やかに片手を上げて答えたのは、不動峰テニス部の長、橘だった。

「何でこんなとこに?」

「決まってるだろ?」

橘は爽やかに笑んだ。

「お前に会う為だよ」

そうして上げたままになっていた左手を、リョーマの右肩にぽん、と置いた。


「・・・・・!!!」


リョーマは心の中で叫び声を上げると、その場を飛びのいた。
後ろにある個室のドアがぶつかった衝撃でドン、と音を立てる。

「おいおいそりゃちょっとひどくないか?」

置いてきぼりにされた左手を宙に浮かしたまま、橘が芝居がかったように言った。
その表情は悲しげだ。

しかしリョーマはそんなことには全く構わずに、浮いている橘の手をさも嫌そうに見つめている。

「・・・洗ってない手で触った」

橘は片眉をあげると、やれやれという様に肩をすくめた。

「知らねぇのか越前。出した直後の尿ってのはこの世で一番キレイな水なんだぜ?」


んなこと知るか!!!!


ここにきてリョーマはキレた。が、少し遅かったようだ。

「細かい事は気にするな、男だろ?」

橘はこれまた爽やかに笑うと、右手をリョーマの左肩に優しく置いた。

リョーマは疲れたようにゆっくりと視線だけを左肩に移すと、全ての感情をこの一言に込めた。


手を洗えーーーー!!!!!

 

 

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