暗密

 

 

武器庫で、二人きり。

 

がさがさ

ちょきちょき

ぺたり


「なぁなぁルフィ!何してるんだよ〜?」

ルフィは火薬の詰まった箱の上にあぐらをかいて、新聞を切っては貼っての作業を繰り返している。
箱はかなり高く積み上げられていて、チョッパーは下から様子をうかがおうとしているのだがさっぱり見ることは出来ない。

「なぁルフィってば!」

チョッパーはぴょんぴょん跳ねて、なんとかルフィの注意を引こうと一生懸命だ。
しかし、ルフィはチョッパーには全く構わずに手元の作業に集中している。
広い麦藁帽子のつばは、ルフィの顔全体に濃い影を落としていた。

「見せてくれよ〜!!」

ルフィは初めてチョッパーの存在に気付いたかのように下でぴょんぴょん跳ねているトナカイに眼をやると、手元から一枚の紙を払い落とした。

紙はひらひらと舞ってチョッパーの足元へ。

 

 

「鹿じゃねーよ!!」

うきうきしながら拾った紙のあまりの内容にチョッパーは叫んだ。

「おいルフィ!!」


ぱさり


抗議しようと上を向いたチョッパーの顔に、きれいに紙が着地した。

 

 

「『じゃあ』ってなんだ『じゃあ』って!!大体どーしてしゃべんねぇんだよ!!?」

またもや紙に向かって、目が飛び出しそうな勢いでチョッパーは叫んだ。

「オレは・・・・・!!」


ひらり


握りこぶしを作れないチョッパーのひづめの間に、すとんと紙が収まった。

 

 

「『?』ってなぁ!!・・・っオレは、オレはれっきとしたトナカイだぁっ!!」

すでに半泣きだったトナカイは、ぼろぼろと涙をこぼした。

「ウゥ・・・ひどいよルフィ・・・・」

チョッパーは鼻をすすりあげながら小さく呟くと、ちょぼちょぼと扉に向かった。


がちゃん


「あ、開かない!?」

もともとドアのノブはトナカイのチョッパーには回しづらい位置にある。
チョッパーは渾身の力を振り絞って扉を押したり引いたりした。
しかし、扉は静かにその役割を果たしている。


ぱさり


動揺しているチョッパーの耳に、紙が着地する音が聞こえた。
冷たい汗が背中を伝う。
後ろを振り返ることができない。


ぱさり


固まっているチョッパーをよそに、紙は静かに舞っては着地している。

「・・・腹減ったな」

武器庫に来て初めてルフィが喋った。
頭の中ではわんわんと危険信号が鳴り響いている。
動物の本能がここにいては危険だと告げている。

「だ、誰かぁ・・・」

チョッパーは恐怖から、叫ぶこともできずに、扉に両手をつくとずるずるへたりこんだ。

ルフィは微笑んだ。

 

 

 

2003年ルフィ誕生日企画作品
キーワードは「サドルフィ」「チョッパー」「新聞」「武器庫」

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