Always be ready!

 

 

爽やかな風が吹く午後、ナミとルフィはめずらしく二人きりで甲板にいた。

ナミはいつものデッキチェアに優雅に足を組んで座り、きれいな水色のカクテルを飲んでいる。
パラソルの影、デッキチェアを背もたれにして、ルフィも水色のカクテルを持っていた。


「あんたってどーしてそういつも危険に向かってくの」

「そうか?俺は冒険の匂いのする方に向かってるだけだぞ?」

「冒険まではいーのよ」

ナミはため息をついた。

「いらない危険までしょいこんでくるのが問題なのよ」

「危険は海賊につきものだろ」


「だから『いらない』危険だって言ったでしょ。避けようと思えば避けられるはずなのに・・・」


「でもお前だって避けられる危険に自分から巻き込まれてるじゃねぇか」

「いつよ!?」

ナミは心底嫌そうな顔でルフィを見た。


「いま」


「・・は?」

ルフィはサンジ特製カクテルの入ったグラスを手の中で回しながら、ナミをふり返った。

「いま?どこが危険なのよ?・・っ、まさか海王類がいるとか・・・!?」

ナミは立ち上がると素早く海を見渡した。

「いたらおもしろかったのにな〜」

ずずーっ

後ろからは、カクテルをすする音が聞こえた。


どごっ


「まったく人騒がせな・・・・」

ナミはデッキチェアに座りなおし軽く手をはたいた。
ルフィの顔は床にめり込んでいたが、カクテルだけはこぼさないようしっかりと握っている。

「お前が勝手に早とちりしたんじゃねーか」

ルフィは床から顔を抜くと、もう片方の手で麦わら帽子をずれを直した。


「で、どこが危険なの?」

「だからいまのナミの状況が」


今度は腕を組むと首を縦に振っている。
そんなルフィに疑わしそうな視線をやってから、ナミはとりあえず周りを見渡した。

しかし一段下の甲板で昼寝しているゾロ以外、特に目に入るものはない。

他のクルー達は声の具合からしてキッチンにいるようだ。


そして視線をルフィに戻すと、ナミも腕を組んだ。
ルフィはこちらを向いてあぐらをかいている。

天気は良好。風向きも完璧。
サンジ特製カクテルも素晴らしく美味しい。


「私のいまの状況じゃ、危険の『き』の字も出てこないわね」

「ふーん?」


ルフィはすっと立ち上がった。
ナミはまゆをしかめてルフィを見上げた。


「うっ・・・!?」

一瞬のうちに、ルフィがナミの唇に噛み付いた。

角度を変えては強く唇を吸う。


二人の体はぴったりとくっついて、一つのモノように同じ動きたどった。


ルフィはあごから首筋へと唇を這わせると、一際強く噛み付いた。

「いつっ!」

呆然と息を乱しているナミを目の前に、ルフィは口の端を少しだけ持ち上げて言った。


「海賊王になる男を前にして、危険がないとでも思ってんのか?」


ナミは目を見開くとまばたきを繰り返した。
ようやく呼吸が整うと、ナミもふっと笑い、次の瞬間には力強い表情に変わった。

「ばかね、返り討ちにしてやるわ」

 


「大体あんた、間違ってたわよ」

「何が?」

二人はパラソルの影に並んで寝そべっていた。
空の色は、夕暮れが近づいてきていることを知らせている。
ルフィは半分まぶたを閉じた状態で返事をした。

「これは『避けられない』んじゃなくて、『避ける気がない』危険なの」

「へぇ・・・」

ルフィは完全に目を閉じるとゆっくりと息を吐いた。

「危険もいーもんだろ?」

「そうねぇ」

ナミは段々赤く染まりはじめた空を見上げた。
目を閉じて風の匂いを吸い込む。


「悪くないわね」

 

 

 

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