「ゾーロー!勝負だぁ〜!!!」

「あぁ?」

 

 

いざ尋常に

 

 

今日も今日とて、グランドラインをひた走るGM号…

というわけでもなく、凪のため進まない船に、クルーはイライラしている所だった。

みんな時間を持て余して、それぞれ暇つぶしに没頭している。

ナミは海図を修正、整理していたし、ウソップは新しい武器を作っていたし、そのそばでチョッパーは医学書を読んでいる。

サンジはキッチンで仕込みをしていた。今日の夕飯は、特別手の込んだ物になりそうだ。

そんな中、ゾロはいつも通り船尾で筋トレをしていた。

「…498、499、500!」

とりあえず1セット終了。一段落して息をついている所に、

 

「勝負しろ!!」

「いきなり何なんだ、お前は!?」

ゾロの目の前には、仁王立ちになったルフィが目をきらきらさせている。

「あー、別にヒマだからいーけどよ・・・船壊さねー程度にしとけよ、ナミがうるせーからな」

「おう!じゃあ勝負だー!!」

 

勝負、勝負と繰り返すルフィにゾロは不信なものを感じたようだ。

「勝負って…何のだよ?」

「3刀流対4刀流」

「??」

「おしっ。ロビーン!!」

船長は召喚魔法を使った!考古学者ニコ・ロビンが現れた!!

ニコ・ロビンは悪魔の実の能力を使った!

「!?」

ルフィのワキの辺りから、美しい指先を持った細腕が1本づつ生えている。

「はっはっはっは、これで4刀流だ〜!!!」

船尾に続く階段の下から、ロビンのクスクス笑う声が聞こえた。

「……」

 

ゾロは内心『アホらしい…』と思ったが、一度受けてしまった勝負を投げるわけにもいかねー、と思い直し

「うっし、来い」

とりあえず、バンダナを巻いた。

 

 

船尾では狭いので、二人は甲板に移動した。

ヒマそうなウソップを掴まえて審判をやらせることにしたようだ。

「えー、それではこれより3刀流対4刀流の試合を始めるっ!審判はご存知キャプテ〜ン…ウソッップ〜!!」

「いーから早く始めろよ」

「もう始めていーのかぁ?」

自分たちが頼んでおいて、ヒドイ態度である。

「(…前振りのインパクト弱かったか?)んじゃー、始めるぞー。いざ尋常に、勝負!!どどーん!」

そんなことでは落ち込まないウソップが、やはりGM号の一員であることに疑いはないだろう。

 

一撃目はルフィの攻撃となった。

「ゴムゴムの〜…4刀流!!!」

「おっと」

気合の入った初撃は、あっさりとかわされた。

やはりヒットするまでのタイムロスが、ルフィの技全般の難点である。

手は甲板にささる前に、バチッと音を立ててルフィの腕に戻った。一応鬼ナミの出現も考慮に入れていたらしい。

「くっそ〜。あとちょ〜っとだったのに!」

「今度はこっちから行かせてもらうぜ!」

 

ゾロは鬼斬りの構えを取った。

どうやらパワー勝負のルフィに対抗して一発勝負に出た様子である。

「…鬼っ斬りい!!!」

「そーはいくかっ」

ルフィはすごいスピードで間合いを詰めてくるゾロを、メインマストの横柱に伸ばした腕でつかまってかわした。

ニヤリっと笑うと下で観戦しているロビンに向かって叫ぶ。

「いよっし。今だ!ゴムゴムの4刀流!!!」

 

「………」

「………」

「………」

「…あり?」

 

「無理よ…私の手は伸びないもの」

「あ、そーか。そーだよなー。忘れてたー、だっはっはっは!」

ルフィは柱にぶらさがったまま笑っている。笑ってごまかそうとしているようにも見える。

 

「おい…」

「ん?」

「ん?じゃねーよっ!勝負はどーすんだ勝負はぁ!」

ゾロは水を差されたことに、かなりご立腹の様子だ。

「えーと、じゃああとはお二人の判断にまかせる、とゆーこと、で……」

ウソップはゾロのヤクザ寸前の剣幕にビビり、武器庫に戻って行ってしまった。

 

と、突然、

「ゴムゴムの〜、つかまえたー!!」

いきなり飛びついてきたルフィを避けることもできず、ゾロは甲板に組み敷かれてしまった。

 

「てんめっ卑怯だぞ!」

「なぁんで卑怯なんだよー。勝負はまだついてないぞー?」

「だからその話をオレはしてたんだろうがっ!!」

「んー…まっいいや。ロビーン、ゴムゴムの4刀流ぅー。」

考えるそぶりをみせたと思ったが、とにかく勝負のことしか頭にないようだ。

とりあえず技を出したいらしく、意外と声にやる気はない。

ゾロはかなり怒っていたが、これから起こることの方が恐ろしいような気がしていた。

覚悟を決めて目をつぶる。一体ゴムゴムの4刀流とはどんな技なのか。

 

「なあ、ゾロ」

「あ?やるなら早くやれよ!」

「いやな、それがな」

「何だよ?オレはこうなったら、ジタバタしねーぞ!」

「ロビン、部屋に帰っちゃったみたいなんだ」

 

「はぁ?」

「だから、勝負はまた次にしよう!」

「……そうすっか」

もうどうにでもなれ状態のゾロは、投げ遣りに言った。

 

結局、3刀流対4刀流の勝負は、引き分けという結果になったかのように見えた。

 

その頃、女部屋では。

(勝負を受けた時点で、剣士さんの負けかしら)と、クスクスと笑うロビンをナミが不信そうに見ていた。

そして甲板では、ゾロが自分の上で4刀流の改善点について熱く語るルフィを見ながら

(押し倒され損かよ…)と思っていた。

 

どうやらこの勝負、ルフィに白星があがったようだ。

 

 

 

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