ただ、それだけ
女が男を見つめる時、そこには圧縮された熱い空間が切り取られる。 時間のないその場所で、女はなぜか凍えているかのようだ。
男が女を見つめる時、その視線の向こうには手が届かないことを、静かに思っている。 その思いは、確実に男を押し潰してゆくかのようだ。
女の首筋は、思いを孕んで寂しさを募らす。 男は、自分がそれに触れている様を想像する。
男の影は、少しづつ濃くなっていく。 女は戸惑い、目を伏せる。
ゾロに肩を後押しされて、ナミは島に一歩踏み出した。 誰もが見ていた。
ただ、それだけだった。
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