優しい人
「なぁ、なんとなく思ったんだけどよ」
キッチンには紅茶を飲みながら読書にいそしむロビンと、修行の一環だと言う昼寝をしているゾロしかいない。 「何かしら?」 机を挟んで正面にいるウソップを見つめると、ウソップは体をこちらに向けて座りなおした。
ウソップはロビンに向かってびしりと人差し指を突き出した。
ウソップは中指も立てて、2を表した。
更に薬指もびしりと立てる。 ロビンはいつのまにか本を閉じて、ウソップの話を興味深そうに聞いていた。
そして4本目の薬指をびしっと立てると、急に真剣な表情になった。
「俺たちって、必要なくねぇか?」
ロビンは一瞬きょとんとした表情になったが、ちらりと横目で、まじめに修行中なはずの剣士を見てからにっこりと笑って言った。 「それはあなたと、私と、剣士さんのこと?」 「そうだ」 ウソップは真剣な顔でうなづいた。 「どうしてそう思うのかしら」
ウソップはくわっと目を見開くと、なんだかおかしなテンションで話し出した。
ウソップの話を微笑みながら聞いていたロビンは、急に沈んだ様子になった。
ウソップはロビンのため息の音を聞くと、慌てたように腕を振り上げ早口で喋りだした。
「お前もそう思うだろ?」 額の汗を拭いつつ、ロビンに笑いかける。
ロビンはゆっくりと顔を上げると、にっこりと笑った。 「それに狙撃手さんがいないと、この船の大砲は今後日の目を見ることはないわね」 「だよな!」 二人はにっこりと微笑みあった。
しかし、そんなウソップの視線がすっと横に逸れた。
その視線を追ったロビンも、ウソップと同じようにしみじみと呟く。 「そうね。・・・なんだか可哀想」 「あぁ・・本人には言わないでおこうな」 二人の目線の先には、先程よりも明らかに眉間にしわを寄せて眠っているゾロがいた。
「剣を使わずに敵を倒したこともあるわね」 「それにこの腹巻もな、意味わかんねぇよな」 「私はどうやったらこんなきれいな緑色の髪になるのかが知りたいわ。やはり先祖代々この髪色なのかしら・・・」 「ぶぷーー!じいちゃんばぁちゃんみんなこの色!?ぶはっ!やべぇ想像しちまった!!見てーーー!!」 ウソップが耐え切れずに床を転がった時、ついにゾロの額の青筋が一本キレた。
ウソップは急に立ち上がったゾロと、その声に驚いて跳ね起きた。 「嫌だわ剣士さん、盗み聞きしてたの?」 ロビンはウソップとは対照的に、落ち着いた様子でにっこり笑いながらゾロを見た。
ブチブチッ
ゾロの青筋が更に切れていった。 「本人目の前にして言いたい放題言ってる方が悪いだろーが!!」 「なんだよ、図星指されて怒ってんのかよ。やーいやーい緑頭の末裔がここで迷子になってますよ〜!!」 ウソップは自分の言ったことに耐えられず、また腹を抱えて笑い出した。
ぼっちゃーーーんっ
「どうもありがとう、って狙撃手さんに伝えておいてくれるかしら」 自分で投げておきながらいかにも面倒くさそうに海に飛び込もうとしたゾロに、ロビンはそっと囁いた。 「礼くらい自分で言え。・・その方があいつも喜ぶだろ」 ゾロは顔をしかめてそう言うと、遠くで大型のサメに襲われひときわ甲高い悲鳴を上げているウソップを助けにいった。
「・・・・・でも」 一人残されたロビンは、首をかしげて困ったように微笑んだ。
03/6/26
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