ナルコレプシー

 

 

目が覚めたら、ルフィと目が合った。

しばらくの間、ぼぅと顔を眺めていると思い切り耳を引っ張られた。

「いてぇ」

「お!起きた」

不満の声を上げたつもりなのに、ルフィは嬉しそうに笑っている。

これで何度目だろう。まだ意識がはっきりしない中でぼんやり考える。

最近、起きるとルフィにじっと顔を見つめられているような気がするんだが。

そして、起きたのを確かめると、歌詞も音程もめちゃくちゃな歌を上機嫌で歌いながら離れていくのだ。

甲板に横になった時にはいなかったから、寝入った辺りからずっといたのだろうか。

今度もゾロが起きたのを確かめると、ルフィはすっと立ち上がった。

これでは、ゆっくり寝起きのまどろみを楽しむことも出来ない。これで最後にして欲しい。

「おい。なんでおれが起きるのを見に来んだよ?」

背中に声をかけると、ルフィは深刻な表情で振り返って重々しく言った。

「ゾロは、なぷしーなんだ」

「?」

なぷしーってなんだ。

「薬が効かない不思議病なんだ」

ルフィは深刻な表情のまま、ゾロのそばにしゃがんで言った。

「おれは病気じゃねーぞ」

「でも、サンジが『腹巻の野郎寝すぎだな。病気なんじゃねーの』って言ったら

チョッパーが『ひょっとしたら、なぷしーかもしれない』って」

「へー……」

午後一番にケンカの予約が入ったことを知る。

チョッパーが言うからには、そういう病気が本当にあるんだろう。なぷしーって名前じゃないことは確かで。

「それでお前は何してんだ」

「なぷしーになると、目が覚めなくなっちまうんだって。だから、息が止まったら起こそうと思って見張ってたんだ!」

息が止まってからじゃ遅いだろーが。

ともかく、やっと理由が分かった。しかし、今日はとても良い天気で、太陽がぽかぽかと照っていて。

そんなことを話している間にも、段々と眠気が襲ってきた。

使命感に燃えるルフィの目が、眠そうな様子のゾロを見て輝いている。

早い内にどうにかしないと、他の連中にからかって病人扱いされかねない。

「……ルフィ。寝転がって、おれの頭にお前の頭をくっつけろ」

「なんで?」

「頭をくっつけて寝ると同じ夢が見れるんだ。もしおれに異常が起きたらすぐに分かるだろ」

言いながら、重くなっていた瞼を閉じる。

意識が沈んでいく中、誇らしげなルフィの声が聞こえた気がして、適当に相槌を打った。

「おれがずっと付いてるから、安心して寝てていいぞ」

自分のおでこをゾロのおでこに付けて、ルフィも目を閉じる。

病人扱いが決定したことに気付かず、ゾロは深い眠りに落ちていった。

 

04/1/9

 

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