見果てぬ夢
いつの間にか、空が白み始めていた。目を上げると、紺青だった雲は薄紫に染まり、桃色のグラデーションがどこまでも続く海の果てが見える。 「はぁ」 空気は冷たく澄み切って。また平穏に過ごすことはできないであろう、一日の始まりを感じさせる。隣では、その元凶が盛大なあくびをしながら、腕を思い切り振り上げて伸びをしていた。 「んあ〜!…むむ。ねみぃ」 「なら寝ろ」 「やだ!太陽出るとこ見るまで寝ねぇぞ!」 「もう出始めてんぞ」 なにー!と目を真ん丸に見開いた顔を見て、ゾロは破顔した。ルフィは涙目で、頭半分覗かせている初日の出を見つめている。 「お前の分もおれが見といてやったから心配すんな 」 「出てくるとこ一番に見たかったのに…」 「んなことより 、何か願い事でもしといたらどうだ?」 「そんなの決まってる!おれはっ海賊王になるぞー!!」 にわかに元気を取り戻し、狭い見張り台の中でルフィは太陽に宣言した。大きく広げた手足の隙間から、太陽の光が力強く伸びてゾロの瞳を刺す。 「おれは、大剣豪に、なる」 一句一句区切った呟きは、朝靄を貫く明瞭さだ。
「お前、海賊王になった後はどうすんだ」 「挑戦してくる奴らが、たくさんいるだろうからなぁ。そいつら蹴散らすのもおもしろそうだな」 「オレも大剣豪になったら、そうなるんだろうな。やれやれ、面倒くさいぜ」 「ししっ!楽しみだな」 いつだって、こいつらの話してることは途方のない夢物語。 「ん?海賊王になるのは決まってるから願い事じゃないじゃん!」 「それもそうだな?」 「おぉい!初日の出ー!やっぱさっきのなしー!」
「ゾロとずっと一緒にいれますように、に変えてくれー!」 「……」
今年も、君のそばにいることができますように。 HAPPY NEW YEAR !
2005/01/07
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