女の子、男の子
それから何分が過ぎただろう、たぶん1分も経ってないんだろうが、私には5分くらいに感じられた時間が過ぎて、忍足が立ち上がった。 「もう帰るわ」 私は忍足が私の方を向いてないことがわかると、そっと体の力を抜いて目を開けた。
大きく伸びをした忍足に声をかける。
「おぉ。じゃ、明日な」 忍足はそれだけ言うと、さっさっと箱から降りていった。
「ちょっと大丈夫忍足?テニス部レギュラーなんだからカッコ悪いとこ見せんなよ〜」
「あぁ、だいじょぶや。軽く打っただけやから」 「それはよかった」 私は心底安心して、ほにゃっと顔を和らげた。
実は結構心配したのだが、さっきのこともあって、なんだか照れくさい。
「あぁ、さんももう帰りや。オレが送ってったる」 「マジ?流石関西人」 私は鞄に散らかっていたものを全部詰め、下にいる忍足に渡した。 「そこは関係ないやろ」 忍足はまた笑いの波が来たのかくつくつ笑っている。 私は箱の縁にしゃがむと、後ろにそっと足を下ろした。
俗に言うお姫様抱っこだ。 でも、そんなに乙女ちっくな状態でもない。 思いっきり伸びてる位置で固定した忍足の手のおかげで上にずりあがってしまったシャツからは私の腹が見えてるし、なにより私がお姫様から程遠い。
私の体は小さい方だが、それでも40キロ以上ある。 「そうか?さん結構軽いで、見た目通りやなぁ」 忍足は王子様スマイルとでも言おうか、いつもよりも優しそうに笑うと、すとんと私を降ろした。
「そやなぁ、んじゃ何て呼べばいい?」 「お好きなようにどーぞ。さん付け以外ならちゃんでもなんでもいいよ」 「ふーむ」 忍足はそこでちょっと考えた。
「もオレのこと好きに呼び」 今度は私がちょっと考えた。
おしゆう・・・、ゆうし・・。侑士くん、くんは雰囲気違うな。
「オッケー。んじゃもう日も暮れたし、さっさと帰るで」 「おぉ!しっかし男の子に送ってもらう日が来るなんて、私に限って想像もできなかったな〜」 侑士が開けてくれたドアをくぐる。 そのまま鍵を閉めるために、侑士は私に背中を向けた。
「自分ではそんなことないゆうかもしれんけど、オレ達から見たら立派な可愛い女の子や」 侑士はくるりとふり返ると、真剣な顔で私を見た。
いつもの軽い空気はどこへやら。 もう男への階段なんて2段も3段も昇っているに違いない。 やっぱり男の子なんだこいつも。
「・・ご忠告どーも」 「ついでにも一つ言っとくとな」 侑士はいつもの意地の悪い顔で笑った。
「・・・んなこた知ってるよ」 「そうか?案外わかってへんよは」 「だまれ関西人。とっとと帰るぞ!」 私はなんだか顔が熱くて、急いで侑士に背を向けて階段を駆け下りた。
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