昨日の敵は、今日の友

 

 

今日は天気が良くて、最高のピクニック日和だ。
私は自分で作ったサンドイッチをぱくつきながら小説を読んでいる。

まわりには誰も居ない。静かな空間が広がっていて気持ちいい。


・・・なのに、私の心はとても爽やかとは言いがたい気持ちでいっぱいだった。

「あー!むかつく!!」

こういう時は叫ぶに限る。
私は思いっきり、思いつく限りの罵声を叫んだ。

あぁ・・・。

そして深いため息をついた、途端。


「すっげー声! さんってそんなキャラだったっけ?知らなかった〜!」


心底驚いた、といった感じの声が後ろから聞こえた。
心底驚いたのはこっちも同じだけど。

びっくとしてすばやく後ろをふり返ると、ドアのある四角い一画の上に芥川があぐらをかいてこちらを見ていた。

「あ、あくたがわ、居たんだ」

「居たよ〜。4時間目の初めからここで寝てたんだもん」

芥川はそう言うと、ふわっと高いところから飛び降りて、私の真正面に座った。
ちなみに、私は4時間目を抜け出てきたところである。

そんなことより芥川の中で私がどんなキャラだったのかが気になるが。・・・まぁいーか。

       

「あ、それ美味しそ〜、貰ってイイ?」

「どーぞ、やけ食いしようと思って作りすぎたし」

「これ さんが作ったんだ?いっただきまーっす!」

芥川はにっこり笑うと、遠慮なく私のサンドイッチを食べ始めた。
いつも対立している跡部側の人間だが、今までそんなに喋ったことはない。
別に私は悪意を持ってないし、たぶんこの人もそうなんだろう。

単なるクラスメイトだ。


「美味C〜!!」

「そりゃ良かった」

私は芥川の笑顔に毒気を抜かれてしまった。
ふっと息をはいて笑うと、壁に背を戻してまた本を読み始めた。

「にしてもさ、こんなとこで一人でご飯食べちゃってどうしたの?」

ぐさっ

刺さった、今の言葉は間違いなく刺さったね。

「いつもは教室で友達と食べてたじゃん」

ぐさりっ

「あ、あくたがわ・・・ストップ」

私は本にしおりを挟むと、そっと芥川を制止した。

「ん?」

何?といった感じで私の顔を覗き込む芥川の顔は、かっこいいと可愛いの中間ぐらいだ。
それに誰もが憎めない笑顔付き。

私は深いため息をつくと、仕方なく事の顛末を話すことにした。

 

「無視されてんの、クラスの女子に」

「え!マジで!?」

「そぉ、前なんか教科書どっか持ってかれたし。だからこんなところで一人寂しくご飯食べてるわけ」

「なんで?なんか事件とかあった?」


あぁ。この無邪気な顔を殴れたらどんなにすっきりすることか・・・。


「近頃、芥川達とよく喋るでしょ?特に跡部とか。それが彼女達、気に食わないんだってさ」

「うわ〜女の子ってば怖いんだね・・・」

「ひとまとめにすんの止めてくんない?私だって一応女の子だけど、こんなことしないよ超不愉快」

今までやられてきた嫌がらせを思い出して、つい私は不機嫌な声で怒ってしまった。


八つ当たりなんて、最悪だ。


なーんて思うかい。きさまも原因の一部なんだよ芥川!
私は基本的に自責の念なんて持たない主義なんですごめんなさいね。

「そっか、ごめん」

芥川は殊勝にも謝ってきた。

意外といー奴なんだ。

いつも、寝てるかいきなりハイテンションになるかどっちかの姿しか見たことなかったからなんだか新鮮だ。


「じゃあお詫びに、これからは さんと一緒にお昼食べるね」


「へぃ?」

そして真剣に考え込んだかと思うと、いきなりわけの分らないことを言い出した。

「だってオレ達と喋るのが原因で無視されてるんでしょ?だからお詫びに一緒にお昼食べるのがいいと思うんだよね」

「芥川さ、矛盾してることに気づいてる・・・?私の被害倍増だよそれじゃ・・・・」

「オレ達いつも屋上でご飯食べてるから。雨の日も屋上への階段で食べてるし。誰にも気兼ねなく食べれるよ。あ、そー言えば さんどーやって屋上入ったの?」

「鍵をこっそり複製して」

ちなみに学校の近くにある鍵屋で10分で作れた。


「すっげー!ホント さんてびっくりすることだらけだー!おもしろい〜!」

芥川はなぜか瞳を輝かせて私を見つめた。

「あ、オレのことはジローでいいよ。芥川って呼ばれても反応しないこと多いから」

「いーの?んじゃジローで」

「うん!よろしくね ちゃん!」

ちゃっかり私の下の名前を呼びつつ、私とジローは固い握手を交わした。
それを合図にしたかのようにチャイムが鳴る。


「じゃあ跡部達呼んで来るから待っててね〜!」

 

 

 

  03/8/31